長男が3歳で発達障害と診断された時、私は「これでやっと、肩の荷が下りる」なんて、思うことはありませんでした。「発達障害は親の責任ではない」ということは理解していました。しかし、心の奥底で感じていたのは得体の知れない罪悪感でした。
その日から「私はこの子に何をしてあげられるんだろう?」と、ひたすら探し続けることになります。
この記事では、そんな私がたどり着いた「償い」の形と、そこから見つけた子どもと向き合うためのヒントについて、正直にお話ししたいと思います。完璧な親にはなれないけれど、それでも、あなたにできることはきっとあります。
診断から1年半、たどり着いたキーワードと学び
これまで息子のために読んだ本は約30冊ほどになりますが、その中でも特に参考になった3つをご紹介したいと思います。
行動分析学(応用行動分析学、ABA)
行動分析学とは、「人がどのようなときに、どんな行動をとるのか」を、周りの環境との関係から理解しようとする学問です。例えば、子どもが片付けをしないのは、性格がだらしないからと考えるのではなく、「片付けをしても褒められない」「片付けをしなくても困らない」など、その行動が起きやすい環境があるからです。
行動分析学は、息子の困り行動の「なぜ?」を理解するための鍵となりました。頭ごなしに「怒る・叱る」から、「分析する」ために一旦冷静に立ち止まる、というように考えをシフトし、どういう状況でその行動が起きるのか、行動の背景にある理由(きっかけや結果)を考えるようになりました。困り行動の原因が特定できれば、望ましい行動が増えるように環境を工夫したり、関わり方を変えるヒントとなります。
感覚統合療法
感覚統合療法は、見る・聞く・触る・動くなどといった感覚のつまづきに気づき、それに合った働きかけ(ブランコ、トランポリン、泥遊びなどの遊び)を通じて感覚を刺激し、日常生活の過ごしやすさや、学習・行動・感情の安定を目指します。
これらの活動は一見ただの遊びのように見えますが、長男にとって大切な感覚刺激のトレーニングになるということを知りました。そこで平日は保育園終わりの自由時間を友達と一緒に徹底的に遊び、週末は大型遊具のある公園、プール、トランポリン、ストライダー、畑の仕事、雪遊び、スノーボード、SUP…など、あらゆる種類のアクティビティを必ず取り入れるようにしました。
これらの活動に何らかの効果があったかどうかを正確に判断することは難しいのですが、落ち着いて過ごせたり、制作なども集中して取り組める時間が、以前よりも確実に増えたように感じます。
PCIT(親子相互交流療法)
PCITとは、子どもの困った行動や情緒の問題に対し、親子の関係を深めながら改善していく心理療法で、その大きな特徴は、子どもの行動だけでなく、親が子どもとのかかわり方を学び、練習することです。
PCITを通して学んだことのひとつが、親子の信頼関係を育てる「肯定的な声かけ」の大切さです。例えば、「〇〇してくれてありがとう」「〇〇(長男)がいてくれて嬉しい」といった気持ちを、意識して言葉にして伝えるようになりました。そうすることで、少しずつですが困った行動が減ってきたように感じています。
また、何もしていないときこそ実は大事な褒めポイントです。じっと待っていられたときや、我慢できたときなど、つい見逃しがちな場面でも「我慢できてるね」「待ってくれてありがとう。お母さんすごく助かったよ」と声をかけるように心がけています。こうした小さな関わりの積み重ねが、子どもの安心感や自己肯定感につながっていることを実感しています。
私が何より大切にしていきたいのは「弱い心を守る」ということ
つい失敗させないようにと先回りして手や口を出したくなることもあります。でも本当に必要なのは、安心できる環境を整え、信頼関係を築き、言葉や態度で子どもの心を脅かさないことだと思うのです。
「大丈夫だよ」「あなたならできるよ」と、そっと見守る姿勢が、子どもが自分の力で立ち上がるための土台になると信じています。
まとめ
親としての責任感から始めた学びの旅でしたが、それはいつしか、息子のことを深く理解し、愛するための時間へと変わっていきました。完璧な親にはなれないけれど、ありのままの息子を受け入れ、共に成長していくことこそが、私にとっての「償い(愛情)」の形なのだと気づいたのです。
もし今、あなたが私と同じように、何をすればいいのか分からず立ち止まっているなら、一人で抱え込まないでください。あなたの「知りたい」「何かしてあげたい」という気持ちは、きっとお子さんに届いています。
この記事が、どなたかの次の「一歩」を踏み出すきっかけになれば幸いです。